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歌津十二人衆

歌津に居る人は、みんな侍の子孫だから、融通の利かないところもあるけれと、良い人間だと、いまでも思ってますよ!
頼朝に従って藤原征伐にきて、領地を貰って百姓しながら、「いざ鎌倉」に備えたっていう家の子孫ですからね。当時の有名な侍は、歌津十二人衆といって歌津一帯に勢力をもっていたんです。新しく領主になった伊達政宗によって、葛西矛の武将が集められて、だまし討ちをされ、全員討ち死にしたんです。その後、伊達藩の直轄になってたわけですよ。歌津って所はね。

「伊里前 海と山が育む宝もの」高橋静男さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]大正15(1926)年生まれ

ロックとの出会い

中学を卒業したら、とにかく東京に行きたかった。千葉の房総半島に農業学校があり、進学を口実に親に話をしましたが、父親に反対されました。それで津谷高校(今の宮城県本吉響高等学校)の農業科に進学をしました。
三銃士のかんちゃんは、中学を卒業すると立川の工場に勤めました。夏に帰って来た時、「おう、元気か」なんて言いながら、彼が買ってきてくれたのがビートルズのシングルレコード「ゲットバック(B面:ドントレットミーダウン)」。彼らしいお土産です。値段のところに見えないようにシールを貼って「こっちゃんはロックが好きだから」って。
彼はやっぱり苦労していて、夜間学校に通っていた時期もあったり、警備保障など色々な仕事について、それから地元に帰ってきてからも、大工や手習いをし、現在は建設会社で重機を動かしたりしています。友情は変わることなく、今でもずいぶん力になってくれます。
小学校の4年生の時ビートルズを聴いて、ブッ飛んだ! 洋盤に縁のなかった小学生の時、「ロッテ歌のアルバム」という番組に出てきたのが、美樹克彦の「俺の涙は俺が拭く」。詩はちょっとクサイんだけど、サックスのイントロがカッコよくて、指を鳴らしながら出てくる。それを母と姉が気仙沼に行く時に、「頼むから買って来てくれ」と頼んで初めて手に入れて、姉のお下がりのプレーヤーで聴きました。

「森呼吸・・」山内孝樹さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津樋の口]昭和28(1953)年生まれ

子どもの頃のおやつ

子どもの頃のおやつといえば、豆もちもうまかった。いっちゃん、かんちゃんと3人でかくれんぼして、かんちゃんがオニになっちゃって、「まーだだよ」って言っている間に、ふたりで「食ってしまおう!」って・・。食べてるところを見つかって、「お前ら何やってんだー!!」ってね(笑)。
豆もちとか、すみもちとか、草もちとか、きな粉を絡めたものを、ばあちゃんが出してくれたりしました。また、同級生のおばあちゃんが、畑で作ってくれた瓜を冷やして食べさせてくれたのを覚えています。だから、本当におやつと言えば手作りのものでした。芋を茹でたものとか、遊びに行った家のおばさんが子どもたちに出してくれているのが、3時のおやつだった時代です。
それから、柿をくすねたりも・・「あそこの柿は甘いから食べよう!」ってかんちゃんが言うので食べてみたら渋柿で、「ウワ~!!」って口から出したり(笑)。そのあと、その渋だらけの口をどうしたかって言うと、今度は人様の家の大根をくすねて食べたり・・。そういうことを大人は黙って許してくれた時代でした。いっちゃん、かんちゃんとは、本当に3人でよく遊びました。

「森呼吸・・」山内孝樹さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津樋の口]昭和28(1953)年生まれ

歌津魚竜化石

ここは化石の街で、「歌津魚竜化石」というのが出たところなんです。それを発見したグループを率いていたのが村田先生と言って、発掘当時、仙台の東北大助手でしたが、最後には助手から一躍、九州大学の教授になられました。私は一緒に発掘について行ったんです。何度もお世話になりました。しばらく発掘に関わっていて、先生が家の隣の旅館に泊まっていたので、いろいろお話聴いたりしました。
ある時、駅を作っていたら、骨が出てきた。歌津の公民館長は「これは恐竜の化石だ」といいながら、袋に入れて持ってきたので、みんなで「これは何の骨だ?」教育課長が「カモシカの骨だ」、私は「道産子だ」と言い合って、とうとうわからず、東北大学に持って行って村田先生に鑑定を頼んだんです。そしたら、半年ぐらいたって、鑑定結果が出ました。その結果が「農耕馬」っでした。教育課長が「全員当たんなかったぞ」って手紙を寄こしたけれど、「待てよ、農耕馬と道産子って同じはずでねえのかな」って、私は今でも思ってますよ(笑)。
化石の調査は続いているかって?また別の場所でも新しく化石を見つけて、削って、中学校の隣の資料館にも何度か持って来たものです。それを「魚竜館」というものを海のそばに作って展示したい、というので、展示してありました。
ほかにも、皿貝化石と言って、エドモンド・ナウマン博士と言って、ナウマンゾウを発見した博士が歌津を通った時に皿貝化石群を発見して、世界の学会に発表したんですが、そこが県の指定場になってるわけです。
それに加えて、独自で、ここから1キロぐらいのとこの田や畑を探して、今度は木の化石を見つけてきたものですから、この町は、「魚竜化石」だけじゃなくって「化石の町」として宣伝しようと思って、化石の小さなものをビニール袋にいれてみんなにあげたりしたこともあります。

「伊里前 海と山が育む宝もの」高橋静男さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]大正15(1926)年生まれ

やんちゃな樋の口の三銃士

小中学校は、ケンカとかもありました。先輩のクラスの給食のパンを前日に食べたりして、逆に先輩たちにパンを踏まれたりとか・・。
遊びといえば、凧を竹ひごを使って作ったり、腰に「ふくべん」を下げて、山へ栗やアケビやキウィ類に似たコウカの実を採りに行ったりしました。弁当を持っていく時は、お箸は持っていかずに自分でナイフで削って作ったり、それも遊びでした。
「そぞめの木で作った箸は大丈夫」とか、「ここの湧き水は飲んだらダメだ」とか、先人の知恵を、遊びの中で先輩や大人から教わりました。Y字の木にゴムひもを皮に穴を開けて通したものを組み合わせて「ゴムはじき(通称パチンコ)」を作ったり、遊びの道具も自分たちで作りましたね。
高学年になると、杉の丸太で車輪を作り、板を渡して、簡単な軸を前輪の間につけて方向を変えられる車を作ったり、冬にはそりや竹スキーを自分たちで作ったりして遊びました。こういう物の作り方は、先輩から教わります。先輩には、悪い先輩もいたし、殴られたりもしたけれど、みんな、殴ったらいけないところや程度もちゃんと知っていました。けんかもして、それで力加減を知っていくんだと思います。遊び、冒険、けんか、失敗・・そういうことを全部通して、色々な痛みや加減を覚えてきたと思います。今の親は子どものけんかに口を出し過ぎです。
名前が孝樹(こうき)なので、小さい頃は「こっちゃん」って呼ばれていました。一つ年下の「いっちゃん」という友だち、それから「かんちゃん」という友だちの3人で必ず組んで、いっちゃん・かんちゃん・こっちゃんで、「三銃士!」です(笑)。
中学生の時に、ビニールハウスのビニールを、テントのように木に張って、ろうそくを立てるものを木にぶら下げて、うちの裏でキャンプをしたり、リヤカーに道具を積んで行って、2晩くらい泊まったりしたこともあります。キャンプ道具のない時代です。我ながら良くやったと思いますね。
実は、この3人で、とんでもない事をしでかしたことがあります。今の子どもたちには考えられないことですが、「鉄砲」のようなものを作ってしまったんです。
「ゴメンナサイ」と心の中で言いながら水道屋さんから2ミリくらいの厚い鉄管を失敬し、さらに狩猟の弾の使用済みの薬きょうを山で拾って穴を開け、鉄管にはめこんで、釘と木を使って引き金を製作。運動会の「ヨーイドン」のピストルに使う火薬を使い、爪ではがし、最初に少しティッシュを詰め、次に火薬を詰め、小っちゃいビー玉を入れて・・。
絶対やっちゃいけないんですけど、出来上がったものをいっちゃんと、かんちゃんと木に向けて撃ったら、木の幹にビー玉がめり込んだ! 音もすんごい!!
もう一丁ショットガンも作りましたが、これは、やっぱりあんまり短すぎてドンと撃ったら(弾が)すぐ下に落ちてしまいました。
ある時、告げ口されて、担任が(もう亡くなられましたが)「お前ら来い」と。
「おい、よく作ったな。見せろ」と言われ、「よーくここまで作ったけども、後はこれ、ちょっと俺がもらっておくから。2度とやっちゃいかん」と取り上げられました。叩かれるかと覚悟していたんですが・・。
ほめられたんだか、なんだか(笑)。
今の子どもたちはやらないが、遊びがドンドン、ドンドンと発展していって何かを作り出していたと思います。だからこそ、今の子どもたちに、「それは、やってはいけない」と言えます。
そんなふうに遊んだ友だちとは、けんかもしたけれど、今でも大切な友だちです。

「森呼吸・・」山内孝樹さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津樋の口]昭和28(1953)年生まれ

冒険心

小学校4年生の頃から、「山の子なのに、毎日海にいた」と言われるほど自転車で海に行って泳いでいました。遊泳禁止区域のロープよりも先の防波堤辺りで、素潜りをしていたんです。そこでマイナスドライバーでアワビを獲ったりしました。ある浜地区に、ものすごい流れの速いところがあって、そこへ父と夏休みに行って潜ったことがあります。流れが速いので海藻につかまって引きに耐え、波が落ち着いた時を狙ってアワビを獲るんです。
唐島もきれいでしたね。そこで素潜りしていたら、ある時見つかって(笑)、「右手挙げてみろ!」「左手挙げてみろ!」「両手挙げてみろ!」・・。で、バレて怒られました。
あの頃素潜りしていたのは、単純に冒険心からだったと思います。海の怖さを知らなかったんですね。海の怖さ、海の仕事の辛さは、大人になって海で仕事をする友人たちの話や体験を通して感じるようになりました。アワビとか、牡蠣とか、ホヤとか・・。われわれは一瞬で食べ、「旨いっ!」で終るけど、我々の林業と同じで、実は長いスパンで手間をかけて育てていかないといけません。その辛さは育ったものだけ見ていても見えないものだと思います。
海は、ある時ふと今まで何の抵抗もなく潜っていた場所を「怖いな」と感じるようになりました。それまでに、色々な事故とかがあったのも影響しているかもしれません。

「森呼吸・・」山内孝樹さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津樋の口]昭和28(1953)年生まれ

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釜神様

この地方では、竈を作る時、火事にならないように、土でこういうのを作って、神様として飾ったんです。昔は百姓の家には、竈を造る所にはどこにでもあったものですよ。今だと、あそこの上品さん(道の駅「上品の郷」)などで、釜神様を売ってます。3~40個並べてありますが、二万か三万します。豊里の香林寺だったか、資料館(壊邑館、閉館中)に二十何体あったのですが、展示してあった小判を盗まれて以来、資料館を一般には見せなくなったんです。
今では新しい家を建てると、こういう炊事場になったから、釜神様をつくる人もなくなったので、自分の手で昔ながらの釜神様を作ってたんです。なんせ、粘土でつくるものですし、実物もなくなってきていますから。

「伊里前 海と山が育む宝もの」高橋静男さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]大正15(1926)年生まれ

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きのこ採り

山へ行けばきのこ、海行ったら釣りね、それから海藻類ね。3歳から山にきのこ採りに行っていっていたんです。誰にも知らせない、ふたりっきりの秘密の場所がいっぱいあるわけですよ。ここでは、共有地、民有地関係なく、山で取れるものは所有権がない、とみなされるわけです。みんなのものですからね。今まで行って一回も咎められたことはありません。そのかわり、誰にも言わないで行くんですよ、秘密で行くんだから。しかも、山に入って誰かが来たら、顔も合わせないように避けて歩く。場所を知られたら大変ですしね。もちろん山のどこで何を採ってきたかなんて、話もしません。9月になるときのこ狩りが始まるんだね。

「伊里前 海と山が育む宝もの」高橋静男さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]大正15(1926)年生まれ

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子供のころの遊び道具

子供のころの遊び道具? 花だね。
この辺りは、実がなるんですよ。んーと、何て言う名前だったかな。そいつをちょっとこう折って、カランカランって鳴らしたり。
あとね、山に行って、何かわかんないんだけど、こんぐらいの花なんだけど、採って、口に入れて、甘くもなんないのに、それを何か、なめてたような気する。
他は、梅ッコ(梅干し)を盗んで、春にできる筍の皮の中に入れて、「スーッスーッスーッ」って吸うんです。昔は梅っコって貴重品だったの。それを筍の皮の中に入れて、そして皮を折って、折ったところの両方に、少し穴ッコが空いてるから、そこから「スーッ」って梅ッコの汁だけ、少しずつ吸うの。筍の皮に入れて隠すとわかんないんです。子供の知恵だね。梅ッコの数、数えてるかも知れないから、食べてしまうと(バレてしまって怒られるから)ね。でも、吸ってるだけでもやっぱりある程度は(バレて)怒られますよ。
あとはね、「なり物」食べましたね。ぐみなんか、今でもそこの畑の上にあるんだけど。それから、桑の実(マルベリー)。これはたくさん食べたなぁ。
何て言ったっけな? 十五夜にする時の、ススキの小っちゃいの、黒くて、猫じゃらしとは違うんだけど、覚えてないんだなあ、何ていう名前だか。黒っぽい灰色のような色で、小っちゃい棒をとって、そして「ツーッ」と吸って食べました。黒い汁だから口が真っ黒くなるんです。味がするんだかしないんだか分かんないけど、子供はみんなそういうものを食べました。食べるもの無いからね。今の子供は食べないですね。昔っからそうやって、勉強しないでそういうことばっかりしてました(笑)。こういうものは、まだまだいっぱいあったんです。

「はまなす咲く浜をもう一度。」及川育子さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津]昭和23(1948)年生まれ

チリ地震津波

チリ地震(昭和35年、1960年)で津波が来たときも、町の中心あたりでも床下浸水が少しあったくらいでした。だから、「ここは津波など来ても大丈夫」って思っていたんです。そのまえにも、十勝沖地震か、2メートルくらいしか来なかったんだけど、養殖の網が被害を受けたんですよね。

誰が設定したのか、このあたりには、6m90cmの高さに全部印がつけられました。「津波が来るかもしれないから、これ以上の高いところに登りなさい」という意味です。ところがね、浜の方にもね、同じように6m90cmの印をつけてるんです。港とか、馬場中山、田の浦なんてところは、すでに当時でもう12mくらいの津波が来てしまうことがあって、そのために何百人と死んでいるに関わらずです。
後日、このあたりの津波の有志以来の歴史を、自分の手でぜんぶ書いてみたのです。県の土木課から、津波の浸水の高さと、津波で亡くなった人のことなど、全部訊いて、津波の記録・被害写真・亡くなった方の名簿を一冊の記録にまとめて作ったわけです。
実は、チリ地震の時に、私はこの被害状況を20枚近く、全部一人で撮影していたのです。町内でその記録してたのは、私ひとりだけだったので、報道するときは、私の写真をみんな使ってました。小学校、中学校の生徒が、うちに昔の津波の様子を聞きに来た時に、写真や記録をみんなに見せました。

「伊里前 海と山が育む宝もの」高橋静男さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]大正15(1926)年生まれ

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避難生活

この避難所となっている家は、平成22(2010)年の8月に建設したものです。その年の2月28日に起きたチリ津波のときに、歌津でも初めて大津波警報が出ました。そのとき、また大きな津波が来ると直感的に思ったんです。大津波警報が出るなんて72年の人生で初めてのことでした。町長の任期の間も、注意報の経験しかありません。あのときに、この家を建設しておいて本当によかったと、今になって思います。

「結う人」牧野駿さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]昭和13(1938)年生まれ

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館城

戦国時代には、歌津町のなかでも戦いがあったんです。魚竜化石のある館崎、あそこには昔、館城(たてじょう)という城があって、それと牧野家が戦って、勝ったらしいんです。そして、その勝利の日を三嶋神社のご縁日にしたのだそうです。魚竜館のところにある管の浜(くだのはま)の前の山際の道路のあたりは、昔は全部湖でした。だから沼深(ぬまぶかい)という屋号になったとか。そういう、いろいろな歴史が書かれてあったんだと、私の祖父ちゃんは残念がっていました。

「結う人」牧野駿さん
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]昭和13(1938)年生まれ

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