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3.11被災

昔からいうんだ。津波のときに、何か忘れ物してきた、って言って戻った人に、助かった人いない。「ほら、逃げよう」って言って逃げるのに、「薬持ってきてけす」って言う人がいる。なに、薬、取りに行くっていうわけさ。「流されて死んでもいいならいいけど」って言って、行かないで、そのまま車で逃げたから、助かった。取りに戻った人で助かった人いないって。

津波来るまでに何十分も時間あっても、このように人が亡くなっている。家に戻った人はみんな亡くなった。そして海岸でいろんな海の道具やなんか、確保なんかして送り出したひとは亡くなったし。船を沖に出すなら出す、置くなら置く、っていう決断を早くしないと。

私の孫もね、「船で逃げる」って言うから「船なんかつくればあるんだから、いらないから、船は沈めてもいいから車で逃げろ」って。

船に乗って、沖に出るのが遅くなって、その辺で津波をまともにくらって、沈没したら船ごと終わりでしょう。船で逃げたって、ここから沖合まで、30分も40分もかかるし、その間に、ホタテからワカメから一杯筏(いかだ)があるから。逃げてもあの島のあたりまで行ったころに波がきて、それで終わりです。津波が来たときに、船を出して逃げるということは、今後考えない方がいいから。たまたま助かった人たちの話は自慢話にならないから。それで万が一船で出た人がみんな津波にやられたらどうするの、って。

私は、震災当日、家から逃げたの。家内のばあさんは、高野会館(志津川の集会所。当日老人会が開かれていたが、帰宅できない多数のお年寄りが屋上で津波を被りながら一夜を耐えた)にいたんだな。

家で、私と息子夫婦と、女の孫と4人で、ワカメの芯をぬく作業をしていた。そしたら、大きな地震が揺れたのね。3人は地震と同時に作業場から田んぼに飛び出ていったの。ちょうどおやつの時間がくるから、3時だから作業場にヤカンかけたの。それがひっくり返ったり。私は地震の時はいつでもね、急に飛び出したりなんかすると、屋根からなにから、いろんなものが落ちてきて、けがする可能性が大きいから、作業場に最後までいた。そのうちに今度は電気が消える。そして地震がおさまってから外にでたら、そしたらほら、3人で田んぼに立ってた。そのうちに有線で「6m以上の大津波が予想される」って始まった。からって。近所の人に、「6m以上の津波がくるとそこまでいくから、ダメだから、車で逃げた方がいいぞ」って声をかけて、向かいの人に「なに洗濯物なんか干して、有線聞かないのか、6m以上の津波がきたらやられてしまうから、じいさん車に乗せて、早く逃げろ」って。そこ、寝たっきりのおじいさんがいるのね。その一声で洗濯物なげて、それで助かったの。

だけど、また一段高いところの奥に、私より2つ先輩の人たちが住んでたのね。ここまでは来ない、大丈夫だと思って庭で見てたの。1回の波で私の家なんかものすごい音がしてバリバリっと音がして壊れたので、驚いて見たときはもう、家はこれまでだった。そのおじいさんを隣の家の息子さんと後ろの山に引っ張り上げて、なんとかその時は助かったんだけれども、常に体が弱かったから。避難先の病院にかかって、こっちの仮設に帰ってきて、とうとう亡くなった。

今回の津波では、まさか流されるとは思わなかったけっども、近所の人の中には位牌を背負って逃げたり、お米もちゃんと高いところさ上げて逃げた人もあったんだ。チリ地震津波も経験しているような人、海岸の一番、川口にある人はいつでもすぐ津波来っと流されっから、いつでも逃げるように準備したたんだ。用心して、お金でも車でも持ってね、逃げたんだ。おらたちはちょっと離れてっから、なに、ちょっと大きな地震が来たと語ったって、流されっと思わない。戸倉のほうなんか奥手(海岸から離れたところ)の人は一家みんな流されたりしてんだ。「地震おさまったから、なに、お茶でも飲みな」ってお茶飲んでて一家みんな亡くなったというところもある。

ここから少し行くと大学の人が碑を建てた「波来の碑」って、ここまで波が来ましたよって、石が建ってっから。

私、いつも枕元に重要書類、土地の所有権とか、なんだかんだおいて、風呂敷に包んで準備してたんです。けど、なにも、逃げることで頭いっぱいで、それ持って、お金などは持たないで出たんです。逃げてくるとき、まさか家が流されると思わないから、また戻ってくるって思っていて、位牌も何も持って来ないで。一回サンダルで出たんだけど、これ履いてはどこにも逃げられないと思って、長靴に履き替えました。サンダルで逃げた人は大変ですよ。ああいうときは気持ちの方は急ぐから。運転できる人が3人も4人もいるのに、大きなトラックもあったのに、自分の車乗んないで、よその車1台にみんなで乗って、自分ちの車ほとんど流してしまったしね。それから小さいトラック買ったから、今は何するったって載らないからしんどいんだ。

近所の知り合いなんかは落ち着いていた。位牌なんか全部背負って来たからね。家の娘も、自分のお金はさておいても、部落の書類は流せない、って2階に駆け上がって、親父が部落の会計役でつけてる一切の書類を全部持って、来たからね。今銀行でも郵便局でも、通帳なくても、連絡すれば全部手続きできる時代だから。何千万のお金だから。部落のお金だから。保険に入って1年しか経ってなかったし。

私は「ささよ」が青少年の健全育成に貢献しているということで、旧歌津町長さんから感謝状をもらったこともあったし、旧歌津町で2番目の防犯実動隊って私たちの部落で作ったのさ。その副隊長までやって、防犯活動に尽くしたってことで、県警と山本知事さんと連名で感謝状を貰ったり、精神薄弱者関係の会長を3期やって、それを後の人さ譲って、今度は相談員になってから、車がないからバイクで町内をグルっとあるいた(出かけた)。今までいっぱいいろんなことやって、みんな感謝状あったけれども、なに、全部みな流した。そっくりね。

そういうのを並べて書いておいたら記念になるんだけど、そういう記録も残ってないからね。

「波静か ~われは海の子~」畠山吉雄さん[宮城県南三陸町歌津寄木]昭和2(1927)年生まれ

3.11被災

今回の津波では、ボランティアで知り合った方やそのご家族がたくさん亡くなりました。地震が起きた時は私は「高野会館」というところにいました。
午前中からお昼までいて、「保健センター」というところに移動したんですね。ボランティアの楽しみをしてたもんだから、仲間と一緒に認知症の研修会を受けに行ったのです。そこで地震にあいました。
高野会館にいる方には、「保健センターに行くよ」と言い置いて行ったのですが、聞いていない方もいて、あとで私がいないと騒ぎになってしまいました。

「わたしの志津川」高橋登美子さん
[宮城県本吉郡南三陸町志津川中瀬町]昭和13(1938)年生まれ

3.11被災

津波のときは、自宅から車で5分くらいの場所で仕事をしていました。大工道具のほとんどは家にありましたが、持って逃げることができませんでした。
地震があってすぐに自宅に戻り、津波まで1時間くらいありましたから、部落の役をしていたこともあって、工場の倒れた材料の様子などを一回りして見に行って自宅に戻りました。「親父、そろそろ逃げっぺ。津波がくるかもしらん」と行って、軽トラックに親父を乗せて、丸ノコを積んで高台に逃げました。その時には、隣のおばちゃんとは「来ないべっちゃない。大丈夫だよねー」なんて話をしていたのです。
助かったからいいようなものですが、おばちゃんは波に追いかけられながら逃げることになりました。お袋は高野会館で踊りの発表会をやっていて、400人くらいの人と一緒に逃げて避難所で一晩過ごしました。私たちは大雄寺さんに避難していて、そこでは中瀬町の区長さんも一緒でした。歩くのが困難なお年寄りが30人ほどいて、その人たちを老人ホームにお世話するよう頼まれて一緒に連れて行きました。
気仙沼に姉夫婦がいますが、電話ももちろん通じませんので、「どうしようかなあ、歩いていこうかなあ」と思っていたらメールが一瞬入って、「あっ大丈夫だ」と思って安心しました。自分はいろいろ家族の状況を把握して安心しても、自分から連絡しないもんですから、後でみんなから「何で連絡しない」って怒られました。そういえば、こっちは大丈夫って言ってないなって後で気がつきました。
次の日の昼ごろ、避難する動きも少し落ちついてきて、自宅の近くまで行った時ですよ。初めてああっ、うちもないかなあって思ってね。それまで自分の家がどうなっているかなんて考えもしなかった。大きな建物があれだけ流されているんだから、ウチもあるわけ無いな、とそのとき気づいたんです。
自宅は親父が建てたものでしたが、建替えかリフォームを考えていたところでした。仕事関係の道具が流されたことについては、モノへの執着はありませんが、長年蓄積してきた自分なりの資料がなくなってしまったことがほんとうに残念です。
小学校から20歳位の時のアルバムだけは拾うことができました。皆に「髪の毛がある時代の写真見つかってよかったな」って言われました(笑)。仕事関係の写真はなかったけれど、幼稚園入園、小学校入学から20歳頃迄の写真が残っているのは、思い出があるだけに、嬉しいもんです。

「『大工』として生きる」芳賀義人さん
[宮城県本吉郡南三陸町志津川中瀬町]昭和35(1960)年生まれ

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3.11被災

3月11日は志津川の高野会館の3階で、老人クラブの演芸会があったんで、それを見に行ったんですよ。ちょうどもう終わる頃に地震が来たんで、会館の職員がね、「津波来るから、どこさも逃げてはダメ、出てはダメだ」っていうわけです。だけどね、やっぱり逃げた人もいるわけです。
残った30人は、3階にいたから4階、屋上に上がりました。上がった瞬間にそこまで波が来ました。そして、屋上のさらにその上に機械室があったので、細い階段を上って、そこにみんなで入って行ったんです。
狭いからね、座ることもできないで立ちどおしなの。機械室に水が来て、電気が切れてしまったから、冷たくてもう大変。ずぶぬれだからね。足踏みしたりして、それでも、自分の足に全然、感覚がなかったんですよね、もう、自分の足だか、何だか・・・。頭が痛くなってくる、体は・・もう、どうにもしようがなかったんです。
もう波は一度で終わりではないんですよ、行ったり来たり何回も来たんです。7回ぐらいは来た感じがしましたね。一晩中いて、朝になって、昼も過ぎて、食べ物もお水も何もないまま、そこで過ごしたんです。どこも逃げるところなんてないんです。瓦礫で一杯で、歩くところもなかったんです。

「煙草ふかして目を閉じりゃ」丸山敬一郎さん(仮名)
[宮城県本吉郡南三陸町歌津伊里前]昭和5(1930)年生まれ

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