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ウチは両親が結婚する時に船を持って組合員になって、漁業権も持っていたので、夏はウニ獲り、11月はアワビ獲り。畑もあったので、大根とか白菜とか、そういう物を食べて、おかずって特別に考えたことはないですね。
私が小さい頃、昆布の開口と言うのもあって、その日は赤崎海岸に親が船で昆布を持ってくると、それを私と妹で伸ばして干して、夕方になったら全部まとめて家に持ってきて、そのままだと乾いてガリガリになっているから、少ししとらせて(湿らせて)長さを揃えて切り分けて、業者に買ってもらいました。
芝から出てきてからは自力で生活していくしかなかったから、ワカメでも昆布でも、現金になるものは私たち子どもも手伝ってやりました。
マツモは採って来ても、根っこを取らないとワガンネ(いけない)。根っこをとったのを干すのに、四角な「ます」(写真下)がある。そこに入れる。これを型で打(ぶ)つ、というんです。打(ぶ)つ夜には、一晩中、時間が4時間くらい、朝の2時3時まで掛かるんで、眠られねえんだ。
うちはごく普通の家庭ですね(笑)。親に怒られるのはしょっちゅうでした。
半農半漁だから、米、麦、豆を作って、差網や延縄で、アイナメ、ドンコ、イカ、タラなどの魚も獲ってたわけです。当時は近隣に市場も、冷蔵庫もない時代です。志津川には市場がありましたが、バスを乗り継がないと行けない場所で、そんなことをしていたら魚が腐ってしまう。傍にある魚屋に売るんです。いくら持って行っても安くてね。お米の買えない時代でした。魚屋さんもその日のうちに売ってしまうということです。魚を売ったお金は生活費になりました。PTAなど、なにかと現金が必要だったのです。
小学校の5~6年から家の手伝いをさせられていましたよ。私は実は、小学校3年生の時に耕運機を操縦していたんです。天然ワカメのほかに、カジメという海藻があって、それにも開口があるんです。その日には、船でうちのじいさんと親父が海に採りに行くんですが、大量に採れるので、一回満船になったら、一度陸に揚げにくるんです。ボーンと置いて、また漁にでるわけ。
陸にいる私たちは、大量のカジメを干し場に持ってかなきゃならない。普通はリヤカーで持っていくんだけど、うちには耕運機があったらからそれ回していったんです。ばあさんと私が、船から下ろしたカジメを耕運機で干し場まで積んで、行ったり来たりしたわけです。
駐在さんに見つかって怒られましたけど(笑)。それでも昔の駐在さんって言うのは今みたいには怒んないですからね。子どもに耕運機って、させる方もさせる方ですが(笑)、私はそういうのが好きでしたね。そんな風に家のことをいろいろと手伝ったりしていましたね。
子どもの頃の遊びはテレビなんかなかったからね、海山で遊びました。そこらじゅう、走って駆けってまわってね。
夏は海に行っては、アワビ獲ったり食べたり、海で育ったせいもあって、海が好きなんですよ。魚釣り、漁が好きなんです。山に行っては、弓なんか作って、ウサギを撃ちに行って、罠を仕掛けて。何も獲れないんだけど、そんな遊びがお気に入りでしたね。
山ではアケビを食べたり、それから、人の家の畑のキュウリを取って食べたり、サツマイモを抜いて食べたり(笑)。そんなこと、この辺りの人はみんな同じです。食べても誰も怒んないんだ。ああ、珍しいバタンキュー(スモモのこと。バタンキョウとも言う。すももを食べ過ぎるとお腹が張って、下してしまう。あるいは樹からもいで、ろくに洗いもせずにかぶりつくものだから、もともとの栄養失調に加えて赤痢や腸チフスになって落命する危険もあったためバタンキューという説あり)ああいうのは取ると怒られる、数が少ないから。キュウリとか畑の物は怒んないんです。その頃は、みんなお互い様なんだ、という感覚です。「盗む」というのでなく、「お腹空いたから食べる」なので誰も怒らない。それは小学生の時ですよ。中学生になってさすがにそれはしないね(笑)。
今は少ないけど、私たちが小学生のときは、自然の天草(てんぐさ)が海にいっぱいあったわけ。友だち何人かと一緒に、それを海に潜って採って、岩場に干して、夕方売りにいくんです。1日干したら、買ってくれる海産物屋さんなんかあるから、売れるんです。子どものすることですから、採る量も大したことないんですが、それでも、1人当たり1本5円のアイスキャンディーを買って食べられたんです。
開口と言って、この日はこの海産物を採っていいですよ、って解禁の言う日があって、天草の開口はお盆前なんです。みんなその日に船で行って、天草を採りに行って、自家製のところてんを作ったんですよ。天草は、「天草つき」で挟んでむしり取るわけです。
アカハタなどの天然物は高級ですからね。今は天然の天草も少なくなりましたね。海草は採らなきゃだめなんです。季節になると採って、岩を空けるとまた新しいものが着くわけです。採らないと自然に減っていってしまうんです。天草で商売してる人は今はありませんね。南の方、瀬戸内海のほうかな、ところてん作ってる人はいるから養殖をしている場所もあるかもしれないけど、こちらは養殖はしませんからね。