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ここに曲尺ってあるんです。その曲尺に8つ、字が書かれているんです。「財」から始まって「病」「離」「義」「官」「劫」「害」「吉」。私は私なりの使い方をしていたんですが、親父に「これ何だ」ってきいたんです。そしたら「これは方位を表すんだ。東西南北、さらにその間に4つ入れて、8つの方位。その年によってその家の方向に合わせると、ここに何を、例えば玄関を、あるいは門を持ってきては駄目だというのが出る」っていうんです。風水っていうのかな。「アレッ私の使い方と全然違う」って思ったんです。
私はこの8文字の意味を勝手に解釈してこの「財」の付近の寸法を使えばお金たまるかな、ここのお施主さんは公務員だからこの辺の「官」の寸法を使ってみるか、というような使い方をしてたんです。
「明日皆に講釈でも語ってやっかな」と思ってたのに、親父と使い方が全然違うんであわててしまったわけです。
これが曲尺です。マガリガネ、尺ガネともいうかな。我々大工はこれと墨つぼがあれば仕事が出来たんです。
4箇所全て、使い方が違います。寸法も違います。
ここ(短い方の内側)は丸目っていうんですが、丸太の径にあてると丸太の周が出るんです。[丸目=表目の1/π倍]
ここ(長い方の外側)は裏目っていって、角材の対角線が出てるんです。「大工さんはルート(√)解かる」っていわれるのはこのことなんです。[裏目=表目のルート2倍]
曲尺が2本あれば、計算尺になるんです。屋根の勾配も自由自在に作れるしこの曲尺の使い方が完全にわかれば家一軒建てることができるんです。
我々はやっぱ尺でないと仕事できません。中学校まではセンチで勉強してきているのですが、センチの方がかえって計算出来ませんね。
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