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酒の肴は、毎日のことだから、それこそ刺身を作ったり、父親はイワシの頭を取って酢に漬けたりして、「うまい」と言って食べてた。それからドンコを生で叩いて、ワタを入れて、タマネギを入れて味噌であえるのが本当に美味しいの。
ご飯なんか食べずにそればっかり食べたくらいだったよ。私たちは「生ものは嫌いだからいらない!」って言ってたけど、父親が「頭を叩かれてもうまいから、食べてみな」って言うから食べてみたら、それが本当に美味しかった。それ以来、「ドンコのたたきってこんなに美味しいなのか」って、食べるようになりました。活きの良いドンコを食べたら、あなたたちだって喜ぶと思うよ。だって、獲れたてを、すぐたたいて食べるんだもの。
ドンコといえば、志津川の奥の貞任(さだとう)山のほうに米広(こめひろ)っていう集落があるんだけど、この地にいた安倍貞任(あべさだとう)という武将が敵に攻められたとき、山の上から米を滝のように流して敵を欺いた、というウソか本当かわからない言い伝えがあるところなの。
今いる仮設住宅のすぐ裏に住んでいる人が、米広から漁師のところにお嫁に来たっていう人でね、うちの父親に魚を食べさせてもらってとても美味しかったと言ってた。
清水浜(しずはま:南三陸町)の方では、炉で大きな鍋を火にかけて、おつゆでも何でも、ドンコだの魚だの入れて炊いて、みんなでお迎えするのさ。山の方から来た人だからめずらしかったんでしょ、それがすごく美味しかったって。よくよく話を聞いてみたら、一度うちに来たことのある米広の人の娘さんだったんで、びっくりしたよ。
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