私のお父さんは昭和5(1930)年に亡くなりました。私が5つの時です。今の子どもたちはテレビ見たりして良く知ってるから、人が亡くなるということがどういうことか、すぐわかる。私は本当の子どもだったんだね、わかんねぇんだね。
父親が死んだ時に、まさか死んだ人でねえっぺね、と思ったから、ふすま開けて、父親の頭にハチマキさせてさ、盥(たらい)みてぇなのに腰掛させたのを見てたんだね。立棺(ご遺体を座らせてお棺に収めること)で土葬だがらね。ただそれ見てたんだけど、死んだなんてわかんないもんだから。すっと、部屋の向こう側から来たお婆さんが、入棺してるのを子どもに見せたくないから、ふすまをバチッと閉めたんだ。
「謡い舞う、神々の見守る浜で」佐藤良美さん
[宮城県本吉郡南三陸町志津川]昭和2(1927)年生まれ
投稿日:2012.01.01
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